【立ち上げ編 3】イベント本番に向けて ─ 施設への「扉」と、本番用の「入り口」
「立ち上げ編」の3回目、最終回です。1回目は本物の地形、2回目は道路の話でした。今回は、木津川市メタバースプロジェクトのイベント本番に向けて、ワールドの「扉」と「入り口」をどう用意したか、という話です。
まず、扉を1枚だけ作る
街のマップの中には、木津川市のいろいろな施設があります。マップで施設を選ぶと説明が出て、そこにある「中に入る ▶」ボタンを押すと、施設の中のワールドへ移動できる。そんなしくみを作ることにしました。
ここで、Roblox(ロブロックス)のことばを2つ紹介します。
- ゲーム1本のことを「Experience(エクスペリエンス)」といいます
- その中にある、1つ1つのワールドを「Place(プレイス)」といいます
遊園地にたとえると、Experience は遊園地全体、Place はその中のアトラクションの一つ一つです。施設の中は、街のマップとは別の Place として作り、ボタンを押すとそちらへ移動します。
いきなりたくさんの施設に扉をつけるのではなく、4月に、まず「山城総合文化センター」という1つの施設だけで、しくみを最後まで完成させることにしました。施設の中は、ひとまず芝生の広場に、スタート地点、歓迎の看板、「戻る」ボタンだけ、という小さな形です。
テストでは動かない、という落とし穴
ところが、ボタンを押しても何も起きません。
調べてみると、別のワールドへ移動する機能は、制作中のテスト画面では動かず、ゲームを本番用にアップロードしてはじめて動くしくみでした。これに気づくまで、しばらく足止めされました。
もう一つ大変だったのが「戻り方」です。施設から街に戻るとき、マップのはじっこではなく、さっきまでいた場所に戻したい。そのためには「どこから来たか」を施設のワールドに伝え、戻るときに街のワールドへ伝え返す必要があります。ワールドが切りかわるタイミングによっては、この情報がうまく受けわたせないことがあり、ここも何度も直しました。
1つの施設で「入る → 中を歩く → 戻る」の行き来ができるまで、数日かかりました。でも、1つで型ができると、あとは同じ形をほかの施設に広げていけます。のちに、扉のある施設は16か所になりました。
本番用に、ゲームをもう1本用意する
次の課題は、イベントの本番です。
それまでの木津川市のワールドは、ふだん公開しているゲームでした。でもイベントの本番では、参加者に決まった場所から入ってもらい、そこから街へ進んでもらいたいと考えました。ふだんのゲームのままだと、入ったとたんに街のどこへでも歩いて行けてしまいます。
そこで、ふだんのゲームとは別に、イベント用のゲームを1本「切り出し」ました。切り出すとは、今あるゲームの一部を、別のゲームとして分けることです。
イベント用のゲームで、参加者が最初に入るのは、木津川市にある体験型施設「JUNOPARK(ジュノパーク)」の大ホールのワールドです。そこから街のマップへ進みます。中には、大ホールと街のマップの2つのワールドを用意し、16か所の施設の扉も、新しいゲームからつながるようにしました。

1つにまとめない、という判断
1つのゲームの中で、ふだん用と本番用を切りかえながら使う方法も考えられます。でも、本番の準備のために設定を変えると、ふだんの公開のほうに思わぬ影響が出るかもしれません。1つのゲームで両方を管理するのはむずかしい、と考えました。
そこで、「ふだんの公開」と「本番の運用」を無理に1つにまとめず、分けることにしました。使い道がちがえば、どこを入り口にするかもちがってよい、という考え方です。
本番に間に合わせるために
切り出しの作業をしたのは、6月のはじめです。
まず6月2日に、ふだんのゲームの側で、移動の中心とスタート地点を JUNOPARK に変えて、ちゃんと動くかを確かめました。同じころ、スマートフォンで参加する人のことを考えて、スマホでの操作のしやすさや、画像、短い説明も整えました。そして2日後の6月4日に、イベント用のゲームを立ち上げました。
ゲームを1本増やすと、最初に入るワールドの内装、施設の扉のつなぎ直し、画面の見た目をそろえることなど、やることは思ったより多くありました。分けるなら、本番が近づく前に、早めに決めるほうがいい。これが、このときの大きな学びです。
立ち上げ編のまとめ
木津川市メタバースプロジェクトのイベントは、7月末に終わりました。
この「立ち上げ編」では、イベントに向けたワールドづくりの苦労を、3回に分けて紹介しました。
1. 本物の地図のデータから、木津川市の地形をゲームに出す(1回目) 2. その上に、なめらかな道路を通す(2回目) 3. イベント本番に向けて、施設への扉と、本番用の入り口を用意する(今回)
1回目の地形は、タイル1枚から。今回の扉は、施設1つから。どちらも、まず小さく作って、しくみが正しく動くことを確かめてから広げました。大きなしくみも、1つを本気で完成させるところから始まります。
木津川市メタバースプロジェクトで運営チームが担当した内容は、事例ページで紹介しています。プロジェクトのほかの情報は、公式サイトのトップページをご覧ください。